AI時代、ユーザーリサーチはどこまでAIに任せられる?デザイナーが検証してみた

 2026.06.29

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こんにちは!デザイナー横断のグループミッション(通称ぐるみ)で活動している「AIインサイト探索チーム」です。

私たちは、リサーチでのAI活用方法を検証し、その成果をデザイナーだけでなく、全職種の方が簡単にリサーチを扱えるようにすることを目的に活動しています。

この記事では、AIをリサーチにどう活かせるのか、私たちが実際に検証した事例をお伝えしていきます。

なぜAIをリサーチに使うのか

リサーチは、ユーザーを深く理解し、確度の高い意思決定につなげるために欠かせない手段です。 一方で、設計・実施・分析にはまとまった時間とスキルが必要で、やったほうがいいとわかっていても手が出しにくいという場面が少なくありません。

私たちは、このリサーチのハードルをAIで下げられるのではないかと考えました。 インタビューやアンケートの設計、ペルソナの作成、インタビュー結果からのインサイト抽出といった工程は、AIが比較的得意とするものです。 これらをうまく活用すれば、リサーチにかかる時間を短縮でき、これまで経験や知識が求められた工程もAIが補ってくれます。

さらに、人間だけでは気づきにくい視点や抜けを補うことで、より多くのデザイナーが日常的にリサーチを取り入れやすくなると考えました。

どう進めたか

まずチームで、リサーチにAIを活用できそうなアイデアを出し合い、実現可能性や優先度を加味したうえで、一つずつ検証していきました。

基本的には、事例を収集し、Claude上で実際に試し、Skillやアーティファクト(Claudeが作る簡易的な専用ツールや画面)として形にして、リストにまとめてチームへ共有するサイクルを繰り返しながら進めました。調査を進める中で気になった点を深掘りしたり、できそうなことから発想を広げて別の検証につなげたりもしました。

また、作成したSkillやアーティファクトはClaudeのプロジェクトに集約しました。GMOメディアではClaudeのTeamプランを契約しており、日常業務でのClaudeの利用頻度が高いことから、Claudeを起点に各種ツールへスムーズにアクセスできる状態を整えました。あわせて、いつでも情報を参照できるようにNotionにAI × リサーチポータルを作成しました。

今回はこの中から、実際に活用につなげられたものをピックアップしてご紹介します。

事例1:インタビュー&アンケート項目作成

ユーザーリサーチにおいて、問いの設計は成否を左右する重要な工程です。 良い問いを作るには、誘導質問になっていないか、クローズドクエスチョンになっていないか、といった中立的な視点が求められます。

そこで、人間のバイアスに左右されずに中立的な設問を作れるSkillを作成しました。

/interview-questions [サービス名]
/questionnaire-questions [サービス名]

/interview-questions はリサーチの目的と予定時間を伝えることで、深掘りのバッファを確保した設問数に自動調整されます。各設問には「なぜこの質問をするのか」という意図が付くため、目的を理解したうえでインタビューに臨めます。

/questionnaire-questions の方でも目的と希望設問数を伝えることで設問が生成されます。設問文だけでなく、各設問に適した回答形式も合わせて提案されます。

どちらもサービス名を指定することで、事前知識をベースにした設問生成に対応しており、誘導質問などのアンチパターンも自動でチェックされます。

やってみてわかったこと

人間が設問を作る際、無意識のバイアスが入ってしまいます。AIはその性質上、人間固有のバイアスから切り離された設問を生成でき、事前情報を与えれば対象サービスに即した内容にも調整できます。設問設計はAIとの相性がよいタスクだと感じました。

活用方法

設問の新規作成だけでなく、すでに用意した設問のレビューにも使えます。アンチパターンのチェック機能を活かし、自分で作った設問の中立性を確認する使い方も可能です。

事例2:AIペルソナ作成

リサーチでは、ターゲット像を明確にすることが、質の高いアウトプットにつながります。 特にAI活用が進む現在は、サービスの背景や文脈などの具体的なコンテキストをAIへ提示することが、アウトプット精度を高める鍵になります。 そこで、より最適なアウトプットを導くための土台として、AIを活用したペルソナ作成を行いました。

サービスのユーザー情報を用意し、ペルソナに必要な項目を整理したうえで、それをもとにAIペルソナを作成するプロンプトを作成しました。

その後、作成したプロンプトをAIに入力し、Notionに用意したテンプレートに沿ってペルソナを作成しました。

作成したペルソナは、情報の追加や修正といった運用がしやすいよう、Notionで管理しています。

やってみてわかったこと

年齢や利用デバイスといった属性情報に加えて、実際のインタビュー情報を中心にコンテキストとして渡したところ、AIペルソナの解像度が上がりました。

一方で、コンテキストが乏しいままAIに補完させると、もっともらしい仮説が過度に強化され、偏った意思決定につながるリスクがあります。AIペルソナはあくまで仮説を具体化する道具として捉え、根拠となる実データの有無を明確にしたうえで運用することが重要だと、改めてわかりました。

活用方法

検証の結果、AIペルソナはリサーチそのものを置き換えるものではなく、チーム内の共通認識を揃えながら仮説検証のスピードを上げるための補助としての使い方が向いていると感じました。

企画やデザイン案をペルソナ視点で壁打ちすることで、「刺さる・刺さらない」の理由や障壁を整理したり、ユーザーストーリーや利用文脈を言語化して、体験設計の前提を揃えることができます。

さらに、他職種も含めてペルソナを基準に施策を検討できる状態を作ることで、議論の質と施策の精度を高めることにつなげられると考えています。

事例3:リアルタイムサジェスト

インタビュー中は、相手の話を聞きながら次の質問を考え、同時に聞き逃しや深掘り不足にも気を配る必要があります。この認知負荷を下げるために、インタビューの会話内容をリアルタイムで解析し、次の問いをその場でサジェストするツールをClaudeで作成しました。

Google MeetやZoomの字幕機能で文字起こしされた会話内容を、Chrome拡張機能を通じてClaudeのアーティファクトに転送します。アーティファクト上のサジェストツールがその内容を解析し、深掘りのための次の質問をリアルタイムで表示します。

やってみてわかったこと

デモインタビューでの検証しかできていないものの、一般的な観点からの深掘り提案は機能していました。一方で、ツールが判断に使えるのは文字起こしのテキストだけで、話し方のトーンや会話のテンションといった温度感を読み取ることには限界があります。この部分はインタビュアー自身が補う前提で使うのが現実的だと感じました。

活用方法

主な用途はインタビュー中の深掘りサポートです。次の問いに悩む認知負荷を減らしながら、聞き逃しや掘り下げ不足を防ぐサポートツールとして機能します。

また、サジェストのプロンプトを変更することで、インタビュー以外の対話場面にも転用できます。商談・面接・説明会など、相手からの質問に対してリアルタイムで関連情報をアシストする使い方も考えられます。

事例4:AIペルソナインタビュー

AIペルソナインタビューは、作成したペルソナ情報と質問項目またはインタビュー目的を渡すことで、AIがペルソナになりきって回答し、対話形式でインタビューを疑似実施できる仕組みです。実際のユーザーにインタビューを行う前に仮説と質問設計を短時間で回し、インタビューの精度を上げることを目的にしています。

そこでClaudeのアーティファクトでAIインタビューツールを作成しました。

運用パターンは3つ想定しています。

  • 人→AI:人がAIペルソナに質問する形式

  • AI→人:AIがモデレーターとして人に問いを立てる形式

  • AI→AI:AIインタビュアーとAIペルソナが対話してテキストとして示唆を出す形式

今回の主な検証は人→AI形式で行いました。

やってみてわかったこと

試してみたところ、AIはそれらしい受け答えを作るのが得意で、感情・態度レベルの反応や、意思決定の大枠の方向性を確認する用途では役に立ちました。 一方で、具体的な悩みや文脈、機能要望、数値に紐づく情報は出にくく、ここをAIで拾い切るのは難しいという感触です。

新規ニーズ発掘の主役として使うより、事前検証やインタビュー設計を支える用途に向いていると感じました。

活用方法

主な用途は、実際のユーザーにインタビューする前の事前検証です。

立てた仮説をAIペルソナに問いかけることで、その仮説が実ユーザーに当てはまりそうか、検証する価値があるかをインタビュー前に判断できます。質問の順序や深掘りポイント、聞き忘れの有無を確認するリハーサルの役割も果たします。また、対話を進める中でペルソナ自体の矛盾や情報不足も明らかになり、ペルソナの改善につながります。

AIの回答は事実ではなく、検証のための材料です。制約や数値、ログ、実運用など、AIが答えにくい具体的な情報は実ユーザーから聞き取る前提で質問を設計すると、AIペルソナと実際のインタビューが互いを補完します。

まとめ

今回の検証で見えてきたのは、AIがリサーチのどこに効いて、どこに効かないかということでした。

設問作り、ペルソナ作成のように知識や中立的な視点が必要な工程は、確かにAIに任せることで取り組みやすくなりました。また、インタビュー前に仮説を検証したり、会話の最中に問いをサジェストさせたりと、経験値が必要とされる場面もAIが支えてくれることが分かりました。リサーチに踏み出すハードルは確かに下げられそうです。

一方で、ユーザーが抱える具体的な悩みやその背景、機能要望や数値に紐づく事実は、AIペルソナからは出てきません。AIは仮説を素早く形にするのは得意でも、その仮説が正しいかを確かめる材料は実際のユーザーが持っています。

今回の検証を通じて私たちは、AIと実際のリサーチは置き換えではなく補完の関係であると考えました。 今後は作った仕組みを実際に試しながら改善し、集まったログや回答からインサイトを抽出して、意思決定に使える形にするところまで進めていきます。

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