生成AI×クリエイティブ制作の可能性──100件の検証から導いた、私たちのAI活用の指針

こんにちは!サービスデザイン部の技術推進チームです。
私たちは、事業部の業務とは別に、約10%のリソースを使って、「デザイナーとしてAIや新しい技術をどう活用できるか?」をテーマに、さまざまなAI技術やツールを実際に試し、その可能性を探っています。
前回のレポート記事もぜひご覧ください
https://blog.gmo.media/ai-tools-real-review
今回は、AIを活用した「クリエイティブ制作の可能性」について、チャレンジしながら探索しました!
今回の調査について
私たちは、生成AIのクリエイティブへの活用に関係する100件にわたる事例の調査と検証を経て、広範囲で可能性を探求しました。膨大な事例があった中で、実務で特に活用価値が高いと感じた事例もたくさんあったので、今回はそれらを中心にご紹介します。
【調査1】画像生成AIの調査
クリエイティブ制作の核となる画像生成AIに焦点を当て、現在できることの幅、上限、下限を明らかにすることを目的に検証。その結果は、デザイン部のメンバーがいつでも参照できるポータルサイトとしてまとめました。

【調査2】画像生成以外のAI活用調査
クリエイティブ業務の効率化や、表現の幅を広げてくれるような、画像生成以外のAI活用法を調査しました。
【調査1】画像生成AIの調査
まず、クリエイティブ分野で中心的な存在である画像生成AIについて調査しました。今回は、社内での活用実績も踏まえ、以下の3つのモデルを中心に検証を進めました。
gpt-image-1
Imagen4(現在はGemini上では提供されていませんが、Google AI StudioやFigmaの画像生成機能などで利用できます。)
Firefly image4
全体的な知見:AIごとの得意・不得意
調査の結果、AIでバナーや記事サムネイルなどを完全に仕上げるのはまだ実務レベルに達していないという感触を得ました。
現状では素材の部分生成や、レイアウトやロゴのアイデアの補助などにAIを活用し、質や独自性はデザイナーが手で補完する、という部分的なAI活用が現実的です。
この方針に基づき、クリエイティブを構成する「パーツ」を生成することに焦点を当て、デザイナーが実務でよく利用する「イラスト」「人物」「テキスト」「背景」の4分野において、各モデルでどのような生成ができるのか、その傾向や特徴を探りました。
今回は、その中でも活用価値が高かった事例をご紹介します。
※以降の評価は、限られた検証回数の中で得られた知見から導かれた結論であり、調査した個人の感想も含まれています。あくまで参考情報としてご覧ください。
分野別の検証結果
1. イラスト生成
普段の業務で特に頻度高く利用されているベクターイラストを中心に、バリエーションや品質、使いやすさを検証しました。ベクターイラストは、以下のようなイラストを生成できないか検証しました。

それぞれ生成した結果は以下の通りでした。

gpt-image-1
上で挙げたようなどのトンマナのイラストも、こちらの意図通りに生成することができました。バリエーションに富み、色の指定も反映されやすいため、非常に実用性が高いと感じました。

Imagen4
こちらも幅広いイラスト生成が可能でしたが、テキストなどの余計な生成物が入ってしまったり、クオリティの安定性の面で、gpt-image-1には一歩及ばない印象でした。色の指定も、適用される時とされない時があります。

Firefly image4
こちらも余計な生成物が含まれることが多く、色の指定も反映されなかったため、活用が難しいと感じました。

また、別軸の検証として、自社キャラクターを「ぬいぐるみ風」に再現度高く編集できるかも試しました。
検証時点で、imagen4に画像を渡す形での使用ができなくなってしまったので、この検証ではimagen4の代わりにnano-bananaを使用しました。
結果としては、元画像の再現度が高いnano-bananaが最も優れていると判断できました。

💡Tips: イラスト生成のコツ
癖は変えられない
イラスト生成は、基本的に各モデル特有の癖に強く引っ張られます(ここでのモデルの癖とは、イラストの構成要素や配置・大きさなどを指します)。そのため、癖によって決まっているパーツや構成要素を変えるような文言を加えても、指示が通らないケースが多いです。
細かい調整を加えたい場合は、illustratorやphotoshopで調整したり、nano-bananaなどの画像編集に特化したモデルを使用することをおすすめします。

プロンプトは完成形を想像して具体的に書くことが肝
生成したいイラストのカラー、特徴、トーン、光の加減、カメラの向きなど、生成したいものの特徴や状態を具体的に、事細かにしてすると、イメージに近い生成が可能です。
プロンプトの構成は、文章形式、箇条書きどちらも検証しましたが、アウトプットに大きな差はありませんでした。
ファンタジー風の指輪、スタイライズされた3Dレンダリング、ゲームCG風の質感、欧米カートゥーンゲーム風の小道具、柔らかい光と鮮やかな色彩、トップビュー斜め構図素材として使うなら追加の指定がおすすめ
素材として使う場合は、途中でイラストが切れないように、イラスト周囲にネガティブスペースを設けたり、透過背景や黒背景などの指示を入れると、加工の際に背景透過や切り抜きがしやすいです。
また、画面を9マスに分割し、それぞれにイラストを生成するよう指示を入れると、同じトーンの賑やかし要素を一気に生成することも可能です。
【出力の注意点】
- 背景は#000(黒一色)
- イラストは枠中央に配置し、イラスト周囲にネガティブスペースを設けてください 【配置ルール】
- 画像を縦横に三分割し、合計9つの枠を作る
- 各枠に1つずつ、合計9種類のイラスト要素を配置する
- イラスト同士が重ならないよう余白を確保
2. 写実的な人物生成
主に、以下について検証しました。
「自然な日本人」の画像を生成できるか
人体の破綻がないか
多様な属性や構図に対応できるか
結論として、どのモデルも人体の破綻はないレベルに達していると感じました。

gpt-image-1
シネマティックな雰囲気が強く、日常的なスナップ写真というよりは、作り込まれたシーンのような印象になりがちでした。顔や構図のバリエーションもやや少ない傾向があります。

Imagen4
最も自然に人物を描画できました。人物の特徴を幅広く表現でき、画角やライティングも自然で、クオリティが高いです。

Firefly image4
こちらも自然な生成が可能でしたが、プロンプトの指定によっては似通った顔立ちばかりが生成される傾向がありました。

💡Tips: 写実画像生成のコツ
内容や状況を事細かに書く
イラスト同様、生成したい内容や状況を想像して、事細かに指定することが大事でした。
思いつかない場合は、以下のような指定を入れて生成してみると、状況の解像度の高い画像ができます。
人・服装 | 日本人、おばあさん、セーターを着たビジネスマン etc, |
場所 | 駅のホーム、森、宇宙空間 etc, |
カメラ | 前からのバストアップ、肩越しに頬が見える程度の画角 etc, |
ポーズ・シチュエーション | ピースをしてにっこりしている、座って悩んでいる etc, |
ライティング | 夕暮れの日差しが入っている、色温度5000K、強いリムライトが当たっている |
3. タイポグラフィ生成
日本語テキストの生成、フォントや文字加工の指定について検証しました。結論から言うと、現時点ではgpt-image-1以外のモデルで、読める日本語を生成するのは困難でした。タイポグラフィ生成においてはgpt-image-1一択と言えそうです。
海外では、AIによるユニークなタイポグラフィの生成事例が盛り上がりを見せていたため、それを参考にgpt-image-1で同様の生成が可能か試しました。
現状の検証結果としては、事例のようなユニークな書体からは離れた、明朝体・ゴシック体などベーシックな書体に収束しがちでした。また、日本の洗練されたタイポグラフィとは離れた、どこか海外風な印象を受ける画像が生成されるケースが多い印象でした。

ただし、ピクセル調や筆文字など、既存フォントとは異なる特徴的なスタイルであれば、AIの個性を活かせるかもしれません。

また、モックアップでのパターン出しや、アイデア出しの参考としては十分に活用できる可能性があります。基本的なロゴ制作のセオリーをプロンプトに含めることで、多様なバリエーションを提案してくれます。

4. 背景・抽象グラフィック生成
汎用的な「シンプルな背景」と、メインビジュアルとしても使えるような「抽象的なグラフィック」の2種類に対して、活用のしやすさとクオリティで検証しました。
シンプルな背景
どのモデルも精度にばらつきがあり、上手く生成できる事例、できない事例がありました。言語化が難しく、意図せず立体的なシーンとして生成されてしまう部分もあったため、プロンプトに工夫が必要そうです。

抽象グラフィック
こちらは、どのモデルも概ね実用的なレベルでの生成が可能でした。

【調査2】画像生成以外のAI活用事例
クリエイティブ業務を効率化するような活用事例も調査しました。
IllustratorのAI機能
生成再配色
Adobe Fireflyの技術を活用し、テキストプロンプトだけでベクターアートワークのカラーバリエーションを生成する「生成再配色」機能を試しました。
短時間で多彩なカラースキームを試せるため、デザインのアイデア出しやムードボード作成のフェーズで非常に役立ちそうです。

パターン生成
名前の通り、パターンを生成するAI機能です。1度作成したパターンはスウォッチに登録されるので簡単に繰り返し適用することができます。

ジェネレーティブアート
専門知識がなくても、コードベースのジェネレーティブアートを作成できます。Webサイトの背景やメインビジュアルとして活用したり、静止画としてキャプチャしてグラフィック素材として使用したりすることも可能です。
AIを表現するインタラクティブなメディアアートをp5.jsで作成して下さい。 AIの持つ先進性と、テクノロジック、デジタルな印象を表現した感じにして下さい。
「スプレッドシートのデータを貼り付けるだけで、指定したスタイルでグラフを生成できるFigmaのプラグイン」を、AIにサポートしてもらいながら開発しました。
これまでは、手動でのスタイルの調整に非常に手間がかかっていましたが、作業時間を大幅に短縮できるようになりました。
なお作成工程では、Figma MCPを活用することで、正確かつ効率的にグラフの仕様を伝えることができました。

【考察】生成AI時代にデザイナーに求められるスキルとは?
ツールの進化ばかりに脚光が当たり、見落としがちでしたが、今回の実践調査を通して、使い手側もそれに応じたスキルや視点を身につける必要があると実感しました。
ここでは、調査の中で私たちが感じた、デザイナー自身が持つべき視点や能力について共有します。
1. AIの「現在地」を知る
できることの幅・上限下限に加え、プロンプトでは消せない癖に関しても把握することが、AIを上手く使いこなす鍵となりそうです。
幅を知る
「どこからどこまで作れるのか」という守備範囲と大まかな傾向を知ることで、使う素材にAIを使うかどうかの判断を的確にできるようになります。
上限と下限を知る
上限を知ることで、安定的かつ高いクオリティで手早く画像を用意できる手段の確保ができたり、下限を知ることで、生成失敗を事前に回避したり、修正・レタッチの工数を見積もったりするのに役立ちます。
癖を知る
あらかじめモデルによる癖の種類を把握し、今実現したいクリエイティブ生成のためには、どの癖を用いれば良いかを選択できるようにすることが大事です。
また、癖は生成画像の「AIっぽさ」を感じさせる原因にもなりがちです。そのため、どのような癖が「AIっぽさ」に繋がるのかを把握しておくべきです。
2. クリエイティブの設計力
生成AIを活用する場合は、デザイナーのクリエイティブの設計力が強く求められます。最終的に必要なイラストを計画して、そこから逆算してプロンプトを構築することが大事です。
例えば、「お正月キャンペーンでの還元のバナー」に使用する人物イラストを生成するとき、「お正月キャンペーンの還元で喜ぶ人」とプロンプト化すると、余計な情報が入ったり、内容のない画像になったりしてしまいます。そのままの情報で単純にプロンプト化するのではなく、お正月であることからアイデアを広げ、「空から降ってきたお年玉をジャンプして掴み、喜ぶ振袖の女性」など、見る人の理解を促せるような世界観やストーリーを計画してからプロンプト化できると望ましいです。

3. プロンプティングの効率化
実務では、素材探しよりも早く、より良い品質が求められることがあります。毎回ゼロからプロンプトを考えるのではなく、下記のような方法を用いると効率よく作業できます。
プロンプトをライブラリ化する
可変部分を書き換えるだけでプロンプトを使用できるので、毎回考え直す手間が省けるほか、誰が作っても同じ品質とスタイルを維持しやすくなります。
{{ イラスト内容の指示 }}のイラスト。
ミニマルな表情、ベクター風、現代的でプロフェッショナルなデザイン、フラットでクリーンなアウトライン、最小限のディテールで洗練された印象。シンプルな線画、モノクロ基調にアクセントカラーのモノトーンで配色する。グレー部分は黒のドットのトーンで表現。
アクセントカラーは#0073d1。背景は透過されている。逆引きでプロンプトを構築する
良い参考画像やこれまでに作った画像をAIに読み込ませて、「この画像を作るためのプロンプトを教えて」とAIに依頼する方法です。生成物に対して一つ一つ言語化する手間が省けるほか、言葉にしにくい雰囲気をとらえたプロンプト案を得られます。
ただし、参考にした画像や世の中の著作物との類似性が濃く出てしまう生成に関しては、注意が必要です。
4. クオリティを見極める審美眼
AIの生成物は、同じプロンプトでも微妙な差分が生まれます。特にシンプルな表現ほど、線の太さやパーツの配置といった僅かな違いが全体の印象を大きく左右します。この差分を見逃さずに厳しく評価し、的確に修正や再生成を判断する力が求められます。
5. 法務・倫理意識
AI生成物を利用する際のリスク(著作権侵害など)を正しく理解し、生成した画像に対して常に責任を持つ姿勢が不可欠です。
意図せず著作権を侵害してしまうリスク
生成した画像が、AIの学習元となった他人の著作物に似てしまう可能性がありますが、万が一、既存の著作物との「類似性(似ていること)」と「依拠性(元にして作られていること)」が認められた場合、著作権侵害と判断されるリスクがあります。ツールの利用規約の確認が必須
商用利用の可否や権利の所在はツールごとに異なるため、必ず規約を確認しましょう。
AI生成物には著作権が発生しない可能性がある
自分が作った画像でも、他人が自由に利用できてしまう場合があります。
まとめ
今回は、さまざまなAIツールやモデルを実際に触ることで、画像生成AIの現在地を探り、クリエイティブ業務への活用法について考察しました。
画像生成AIは驚異的なスピードで進化しており、私たちの仕事環境も大きく変化しています。この変化に対応するために必要なのは、絶えず情報収集を続け、そして何よりも「実際に触って試してみる」ことだと考えています。
今後も、私たちはクリエイティブとAIの可能性を探求していきます。
引き続き、ぜひご注目ください!




